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片麻痺の人のためのリハビリガイド
感じることで動きが生まれる
中里瑠美子 著
ISBN 978-4-7639-2141-3
B5判 112頁 2017年2月15日発行
定価 2,376円(税込)
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「麻痺を治してほしい」という希望に応えるためのリハビリテーションの方向性

片麻痺になると,例えば,なぜ手が曲がってしまったり,踵がつかなくて足が内側に向いてしまったりするのでしょうか.そして片手と片足が使いにくいだけでなく,なぜもっとずっと不自由なのでしょうか.
片麻痺という自分の状態は一体どういうことなのかを知ると,片麻痺のリハビリテーションはどのような方針でどのようなことに意識を向けていけばよいのかがわかります.傷ついた脳は,正しい学習方針を示されなければ,脳にとっては効率のよい単純で簡単な動きを選択します.しかしそれが,本人にとってはとても不自由な片麻痺という状態として現れるのです.
正しい学習方針の基本は,「からだの声を聴くこと」.自分の身体の重さや姿勢(身体部分の位置関係)などを感じられ,その自分の身体で外の世界の物の形や重さや方向や肌触りなどが感じ取れるか,そこからイメージを広げられるか(自分自身の記憶と結びついて生き生きとした経験となるか)どうかです.本書ではその方針に基づいて,患者さんご自身で取り組むことのできる訓練についても提案しています.
片麻痺になってこれからどのようなリハビリをすればよいのか不安に思っておられる方,頑張って動く練習を繰り返しても自分で良いと思える変化のみられない方,より良い回復を目指す方のため,そしてそのような患者さんの「治療」を模索するセラピストのためのテキストです.


◉書評より◉

宮口英樹(広島大学学術院,作業療法士)

本書は,片麻痺の人と共感することから始めてみようとした試みである.共感は,いわゆるこころの共感ではなく,セラピストが患者と互いのからだを媒介として生活文化の共感を目指そうとしている.簡単に言うとこうだ.「私(OT)は,毎日の生活の中で自分のからだをこんなふうに感じているのだけど,あなた(患者)はどう?」というように.そして,たとえ患者が異なった回答(やわらかいものを固いと表現する等)をしても,それを決して否定することはない.「脳が損傷しているのだからそんなことは当たり前,だから感じていることを何でも話して」といったように,伝える,教えるのではなくて,共感しようとするのだ.
リハの書籍は,セラピストがどのように患者の声を聴き,病態に応じてどのように訓練や環境調節等の支援を行うかに主眼が置かれたものが主流であり,それは,専門職の文化に違和感なく受け入れられる.また当事者である患者はその想いを広く伝えようとすることによって専門職へのメッセージを送る.感度の高い専門職は,そのメッセージを受け取ることに敏感であるが,本書の位置づけはそれとは少し異なるようだ.たとえば,「尊敬する人や好きな人と握手をするのと,そうでない人とでは,ほぼ同じ構造の人間の手という対象物であるのに,違う感覚になるし,それに応じて動きそのものや力の込め具合も変わってくるものです」(第1章).根底にあるのは,障害をもつからだを考える前に,患者とセラピスト間でも,からだと脳のネットワークは,個人個人で異なるのであり,それは,自分の「文化としてのからだの動き」(第4章)が反映されたものだというメッセージだ.
著者の中里瑠美子氏は,中枢神経系のリハに30年以上もかかわってきたベテランOTである.イタリアの神経内科医Perfetti氏が開発した認知神経リハ(認知運動療法)に15年以上かかわってきた、わが国随一のからだの声を聴くスペシャリストだと思っている.中里氏は,以前から生活場面における片麻痺患者の身体感覚について,中里流とも言える視点をもって臨床に携わってきた.たとえば,片麻痺の感覚障害によって指の識別が困難であった女性の患者に,「指輪をはめるのにしっくりしたのはどの指」と尋ねると指が識別できることがあると話してくれたことを思い出す.指輪を毎日はめて生活してきたその人の歴史とリハは切り離せないのである.この本にはそのような中里流のやわらかさが随所に反映されている.
本書は,4章で構成されている.第1章は,私たちが日常生活でどのようにからだを使っているか,意識できること,できないこと,そして生活環境を感じることがいかに大切かを,具体的な例を挙げながら説明している.当事者も対象としているため,イラストも豊富で表現はやさしいが,根本的な理論は,認知神経リハをベースにした認知科学に基づいており,読み手の知識量に応じて,染み込み度合いは異なるだろう.第1章の内容を具体的に生活の中で取り入れていくための方法を提示しているのが第4章である.より専門的に理解したい人は,認知神経リハの書籍を参考にされるといい.
全4章の中で私が注目したいのは,第3章「片麻痺のリハビリテーションの基本ルール」に述べられている,家族や介護者向けに書かれた,否定しない,気づかせる,修正のためのアドバイス,といったルールである.リハの時間が短縮され,短時間でいかに日常生活動作を可能にするかというアウトカムが方向性となっている.そのため,日々,患者と向き合う家族や介護者が,専門職によるリハ以外の時間を担う必要がある.本書を参考にすれば,元来リハが価値を置いてきたテーラーメイドアプローチを家族や介護者の協力のもとに行ってみることもできるだろう.
片麻痺にかかわるすべての人が,本書を持って議論してみてはどうだろうか.
「作業療法ジャーナルVol.51 No.6 2017年6月」より

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片麻痺の作業療法 QOLの新しい次元へ
わたしのからだをさがして 〜リハビリテーションでみつけたこと


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